表現の拡張展2025:ワンアクション
会期:1/28(火)〜2/7(金)10:00-17:00(最終日は15:00まで)
会場:筑波大学総合研究棟D棟1Fオープンギャラリー

 表現の拡張展は「造形実験演習Ⅱ(学群生対象)」「平面・立体構成演習(大学院生対象)」履修者による授業成果展です。設定されたテーマから着想を得て展開を探ることで、造形表現の可能性を切り拓くことを目的としています。過去に設定したテーマには「10 点組作品」「黒一色」「S0 号」「発注」「ジョイント金具」「紙箱」などがあります。 
 今年のテーマは「ワンアクション」です。一回きり、短時間の行為の結果として現れる形に着目した表現を模索してもらいました。造形表現では作者が思い描く理想的な形を実現するために緻密な作業を積み重ねるアプローチもありますが、一方で瞬間的な操作により形を生み出して作品化する方法もあります。形を直接思い描くのではなく、形が生まれる仕掛けの方を考えてみる取り組みです。形の生成に介入する度合いをあえて一段階下げることで、想像の範囲を超えた形に出会える可能性が生まれます。作り手にとっても、鑑賞者にとっても、プリミティブな好奇心を頼りに造形に対峙するワクワク感を今一度思い出すきっかけとして本展が機能することを期待します。(芸術系・構成領域 上浦佑太)

 上浦佑太(芸術系・構成領域)
峰菫 「one tie」 網戸ネット、テグス (10点組作品)
一辺40cmにカットした網戸の中央に正三角形または正方形を1つ想定し、その頂点にテグスをランダムに通して、絞ることによって得られる偶然的なシワの形に注目した。
久々津寿基 「Act of dripping」 ビニール系接着剤、アクリル絵の具、木材 S12号(60.6×60.6cm) 3点組作品
ボンドにアクリル絵の具を混ぜた塗料を段差のある土台の頂点から注いで生まれる形。
和田祐香 「Step on」 メラミンスポンジ、墨汁 25点組作品(各30×30cm程度)
墨汁を溜めたトレイにメラミンスポンジを2つ浸し、この上に両足で10秒間立つ。圧力がかかっている箇所だけ墨汁が表面まで吸い上げられ、足の裏の形が部分的にプリントされる。直立しても人によって体重のかけ方が異なるため、自然とそれぞれ違う模様が生まれる。
石川綾菜 「 Wrinkles」 布、顔料
布を台の上に置き、シワを伸ばさずにシルクスクリーンで長方形を転写した。
石毛亮太 「One stroke 」 墨汁、ホワイトワトソン紙、木製パネル、モニター 4点組作品、いずれもS20号(72.7×72.7cm)
腕や体を捻じって負荷をかけた姿勢で円を一筆書きした。4種類の異なる姿勢で描いた。
澤田亮 「巻き尺道」 巻き尺、ロウト、墨汁、3Dプリンター出力品、紙
巻き尺本体にロウトを取り付けて墨汁を注ぎ、メジャーを5m引き伸ばして先を固定する。巻き尺が巻き取られると本体が引き寄られ、一直線上に移動する。ロウトから注がれる墨汁が紙の上に描いた線を作品とした。
赤城のい 「cleaning traces」 墨汁、紙、木製パネル 5点組作品
掃除用具に墨汁を染み込ませ、一直線に動かした軌跡を作品化した。左から庭ぼうき、スポンジ、卓上ぼうき、ガラスワイパー、たわしを使用したもの。
庭ぼうき
庭ぼうき
ガラスワイパー
ガラスワイパー
清水優美 「One absorption」 布、顔料
複数色の顔料を混ぜて水で薄めた液に吊るした布の一部(半分程度)を浸し、吸い上げられた形をそのまま作品化した。色によって吸い上げられる高さが微妙に異なることで、予想外の配色になった。浸す時間や顔料の濃度をさまざまに実験した。
田口真帆 「One Drench」 コピー用紙、クランプ
紙を束ねてシャワーで水をかけた結果、自然に生まれるシワをそのまま提示した。
水をかけている様子はこちら(動画)
宗近祐里 「cross section」水粘土
一辺20cmの立方体を水粘土で作成し、これを紐状の素材で切り取って2つに分けた。切断に使った素材は左から順にラップの刃、鎖、ボールチェーンで、それぞれ断面に生まれる起伏のパターンに違いが生じる。
ラップの刃による切断の断面
ラップの刃による切断の断面
鎖による切断の断面
鎖による切断の断面
ボールチェーンによる切断の断面
ボールチェーンによる切断の断面
瀬尾海月 「Peel away」 紙、接着剤、木製パネル
色紙を水張りした木製パネルの半分のエリアに別の色の紙を貼り付け、乾燥後に引き剥がした。
宮崎桜 「One Stretch」 ビニール袋、木製パネル
黒のビニール袋を頭からかぶり、顔の前で両手を並べて突き出してビニール袋が破れる寸前まで伸ばした。表面と裏面を切り分けてそれぞれ平面のパネルに貼り付けると、後頭部の丸みと両手の形による凹凸が残る。
金田一心 「Spilled ketchup」 ケチャップ、ふすま紙、木製パネル
ボトルを踏みしめてケチャップを紙の上に飛散させた。
福田瑠華 「Wall」 紙粘土、木製パネル
木製パネルの上に粘土を盛り上げ、これを壁に押し付けて凹凸を転写した。
徳元麻衣 「Wind chord」 サーキュレーター、紐
サーキュレーターのスイッチを入れると紐が風に揺れる。スイッチを入れる行為を鑑賞者参加型のワンアクションとして扱った。
講評会の様子
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